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アダルトビデオ業界人に聞く

 このサイトの「July 23, 2005 プロダクションの進む道は」というエントリをご覧いただいたとある有名AV会社の社員の方から興味深いメールをもらったので、ご本人の承諾をえて転載させていただくことにした。N様、誠にありがとうございます。
 さて僕自身はアダルトビデオ業界には知人もおらず、真反対といってもいいような真面目番組を作っている身でもあり、その内情を知る機会も当然なかったのだが、今回さわりだけお伺いすることが出来た。

 我々テレビ番組を作っている制作者はバリバリの規制のもとで窒息しそうになりながら仕事をしている。しかし、やはりAV業界というのは相当ユルイというか、自由裁量で何でもできるところがあるらしく、いろいろな映像表現を実験してみたい野心的なディレクターにはおすすめかもしれない。だが、野望をもって参加したものの、そういうルーズな環境に甘んじて流されてしまう人もいるとか。

 この辺は、うちの会社でも少し言えることだ。30歳くらいになっても自分なりのテーマや制作手法が見つからない人は転職を考えたほうがいいだろう。何せ会社員とはいえ、自分の名前を業界に売り込んで猛烈な競争をサバイブしなければならないのが、この映像業界である。キー局やNHKでもない限り、会社の名刺なんてのは全く役に立たない。

 AVとはいえ、視点を変えれば、かなり芸術的な表現にも挑戦しようと思えばできるエキサイティングな業界ともいえる。このような世界を体験する機会もなかなか無いだろうし、興味をもった無謀な若者は飛びこんでみるのも面白いかもしれませんよ(超無責任でスイマセン)。


~AVはやっぱり儲かる?~
 あくまで僕の勤務するメーカーに限っての話ですが、一般DVD販売においてヒットとされる3000本というのはAVでいえば「及第点・最低ライン」であり、基本的には「5000本以上」を見据えて企画・制作をします。(ちょっと前まではこれにVHSもありました)1万本超えというのもめずらしくなく、僕の勤務先では毎年20本前後出ています。

 業界全般的に、一般人でも聞いたことがあるような有名な女優モノですと最低でも3万~は売れていると思います。現在、タレントとしても活躍している蒼井そらさんはデビュー作が10万本以上売れて話題になりました。(有名でも何年もやっているような女優だとたいして売れません)

 AVの撮影なんて長くたって3日(ロケハン含まず)、編集も数日で終わってしまうので、「一般映像と比べると労力に比して儲かる」というイメージはまあ、その通りでしょうね。

 ハコフグマンさんもおっしゃっているように、テレビでは映像の著作権は制作会社にではなく局に持っていかれてしまいます。だから番組がヒットしようが2次利用で売れようが全く儲からない。しかし、僕の勤務先はちゃんと著作権を持っているので売れれば売れただけ利益が出ます。

 DVDで販売して数ヶ月たったらBB(ブロードバンド)でも流していますがこれなんかは同じ素材を右から左に流すだけなので、利益率がめちゃ高いです。

~AV業界で働く?~
 AV業界は基本的に誰でも働けます。学歴とかキャリアとか関係なく、いろいろと事情を抱えた人でも受け入れます。そういう「社会的なクッション」という役割を果たすという意味で、存在意義はあると思っています。まあ、それ以上にお客さんのニーズがあるわけですが。

 AV業界のイメージもここ数年で随分クリーン(?)になりました。メディア倫理協会が経済産業省の認可をもらって法人化したり、一流大学の新卒生が就職に来ることも増えました。

 ただやはり、クリエイターにとって必須の”ハングリー精神”みたいなのはこういう「楽して儲かる」土壌ではあまり養われないように思います。最初は「AVを踏み台にしていつか映画をとってやる!」というような熱い魂で入ってくる人もいますが、時間がたつと結局流されちゃうみたいです。(VシネやAVからスタートして一般映像の監督に返り咲いた方もいるにはいますが、非常に稀なケースですね)

 いいところは良くも悪くも「規制が緩い」ということでしょうか。はっきり言って撮りたいように撮れます。単体女優も事務所の縛りがゆるいところが多く、イメージ戦略なんてないに等しい。芸能人を使うと、やれ「シミを消せ」だの「肌を明るく修正しろ」だのうるさいかと想像しますが、AV女優のパブリシティは契約の範囲内であればかなり自由に使えます。(まあ契約自体もかなりいい加減ではありますが)

 女優本人に発言権はほとんどないですしね。ロケも違法ギリギリ(ていうか違法?)なことをビシバシやりますし、技術的な問題がなければ撮れない映像はないと思います。
というわけで、映像制作において、実験的なこと、社会的に非難されそうなことを撮ってみたい、という方にはクリエイティビティをいかんなく発揮できる職場であると思います。ジャケットデザイナー、ウエブデザイナーもしかりです。デザインに関してはゴチャゴチャ言われず、かなり裁量をまかせてもらえます。

~今後~
 AVというのはクオリティなんて関係なく、作れば儲かる、そういう仕組みになっています。ましてや販路を握ってしまえば完全に左うちわです。それゆえ惰性に流されるという雰囲気も否めない。人材も育たないし、技術レベルも上がらない。上昇志向がある人には「ぬるま湯」に感じるかもしれません。

 僕自身はエロに関わることにあまり後ろめたさみたいなのはなく、映像のうちの1ジャンルという認識しかないのですが、戦略もコンセプトもなく、焼き畑農業的にAVを垂れ流していくことに少々飽きてきたのと、これ以上ここにいても成長できる見込みがないため、そろそろ転職を考えています。

 ついでながら日本の映像業界に言及させてもらうとすれば、やはり頑張った制作者にはきちんとチャンスと利益が還元されるようなシステムになるべきだと本当に思います。
宮崎駿さんなんかもこの辺はよくおっしゃっていますが。また、NYのブロードウエイのような、制作者と批評家の激しいせめぎあいというかお互いがプロとしての意地を見あうような、そういう競争原理もあるといいのではないかと思っています。


 いかがでしたか?もし何かご質問などございましたら、hakohugu2005@
yahoo.co.jpまで御連絡くださいね。あと、このようなギョーカイ内部情報、今後もお待ちしてます!

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Comments

> DVDで販売して数ヶ月たったらBB(ブロードバンド)でも流していますがこれなんかは同じ素材を右から左に流すだけなので、利益率がめちゃ高いです

BBに流すって軽く言えるトコが凄いなあと思います、物事の推移は下半身からみたら一番みれるっていいますが、本当ですね

Posted by: マルセル | March 22, 2006 at 05:49 PM

まあ、情報機器流通の触媒としてエロに勝るものはないでしょうね。

さて、グーグルのページランクという検索技術は、そのサイトにどれだけリンクが張られているかを解析するアルゴリズムで、検索結果の順位を決めているそうな。

みなさん、アダルトサイトを見ていて、無料サンプル見るためにあちこち飛ばされた経験はないですか?(と、友人が言ってました^^)

僕は最近あれが検索結果対策だとようやく気づきました。って本当かどうか分からないんですけど、誰か知ってます?

Posted by: hakohugu | March 23, 2006 at 01:12 AM

やっていることが当たり前のいまのAVを、ひとくくりで語ることは無益でしょう。

私は、下手な演出と芝居でのエッチよりも、防犯カメラの片隅に不意に映ったしまったような真剣なエロのほうが、受け手にカタルシスを感じさせると思っています。

映像の強さについて、まじめやエロを越えた論議がなされないのでは意味がない。
上手な嘘よりも、私は下手な真実を選ぶ。ロベール・ブレッソン言葉はすべての映像作家に心に響くと思っています。

Posted by: スポンタ | March 23, 2006 at 09:53 AM

それでは次に、AVではなく、エロゲー業界で売ろうとしている人間を特集されてみてはいかがでしょうか?
……実は私がそうですが(待て!!)

Posted by: KM | March 23, 2006 at 11:34 PM

最近は、著作権は局が持っていけませんよね。独占禁止法で警告が入って。

 確か持ってるのは窓口権だけだったように思うのですが。

Posted by: 孝好 | March 24, 2006 at 02:13 AM

スポンタ様
ロベール・ブレッソンについて何も知りません。すいません。ただパンチラの方がインパクトをもつことだけは知っています。

KM様
エロゲーとなると、私は見たこともありませんが、秋葉原のああいう店には勇気がなくて入れません。

孝好様
またまた無知で恐縮ですが、ほとんどの場合、局関連会社を間にかますので、窓口権は関連会社にあるのではないでしょうか。プロダクションには著作権が入らないように、うまく組まれているはずです。

なので、我々は最初の契約の段階から著作権を半々にするなどの交渉を局関連会社とし始めたというのが現状です。その方が局としても制作費をさらに削減することができるので、最近では半々のことも多いみたいですよ。

Posted by: hakohugu | March 24, 2006 at 01:45 PM

アダルトビデオはパッケージメディアなので制作会社は自前の著作権を確保するのが容易なのかもしれませんね。

放送でも制作会社が制作費を出せば著作権を持つことができます。

著作権法の改正も重要ですが、制作会社も相応のリスクを負えば権利の拡充ができたはずです。アニメ制作会社のプロダクションIGもリスクを負ってきたことによって成長してきましたし。

Posted by: Piichan | March 24, 2006 at 06:35 PM

>ただパンチラの方がインパクトをもつことだけは知っています。

ブレッソン的に言うならば、予定調和のマリリン・モンローの地下鉄の通気孔からのパンチらよりも、植草教授が悶絶するようなパンチラの方が魅力的である。そんな感じかな。....www

Posted by: スポンタ | March 25, 2006 at 10:16 AM

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