ネットで作り手優位にはならない
記者、作家、ディレクター、CGクリエイター、デザイナー…。
世間ではクリエイティブとされる職種だが、なかなか一部の有名人をのぞき、自分の名で食っていくのは難しい。インターネットは作り手側がシステム側に首根っこを押さえられている現状を解き放つかと思われたが、実際は厳しい。解き放たれたのはアマチュアだけで、それも喜ぶべき状態なのかは判断に迷うところだ。食い物にされているという見方もある。
AERAの2006.8/7号で、茂木健一郎氏が梅田望夫氏にこう語っていた。「今はシステムを押さえた人間が強くて、例えば個々のクリエイターやアーティストは、コンテンツプロバイダーでしかない」。ヤフーの動画配信担当者も、決して制作には手を出さないと言っていた。変な色気を出さず、システム側に徹するのは、経営のことを考えれば鉄則だといえる。
いまの時代、プロデューサーの求人は結構ある。といっても、本当のプロデュース能力を問われているのではなくて、実際はみんなが欲しがっているものは“人脈”である。ネット時代になったから、純粋な作品の善し悪しで判断されるなんてことはまだなくて、現実にはすべてが人脈、つまりはコネで動いている。それに最も重要なのは、局とか電通とかお金をもっている組織にコネクションがあるかどうかである。
これは当然である。局は、知っているプロデューサーに仕事を発注する。プロデューサーも、自分にとって利益があるところに、仕事をふる。
プロデューサーも企画がどんなに面白そうでも知らないディレクターと仕事をするリスクを考えたら、多少の問題はあっても長年の実績がある子飼いの制作会社を使うだろう。面白ければ、一部だけパクればいいのである。著作権なんて企画段階ではあってないようなものだから、号令をかければいくらでもアイデアは無料で集まるし、パクることは造作もないことだ。企画なんて8割方、コネだ(別に悪い意味で言ってるのではないけど)。
私の会社でも民放、NHKそれぞれにコネのある、というかOBなどがいて、彼らが仕事をとってくる。実際の働きぶりといえば、大したことないのだが、報酬は若手ディレクターの3,4倍はとっているであろう。しかし、コネが無ければ仕事をとれない、という現状を考えれば、その報酬差は経営上、合理的といえる。しかし、これもまたクリエイターではなく、システム側にお金が回っているといえる。
様々な会社と仕事をすれば分かるが、取引先に親戚がいたり、息子がいたり、網の目のようにコネが社会に根を下ろしていて、リアルなお金はそうやって人脈の中で回っている。だから、私自身も制作の実績をあげ、局のプロデューサーと飲みに行ったりすることで、できるだけコネを作ろうとしている。ネット時代とはいえ、こういう強固な集金システムは簡単には無くならない。
建設の談合と違い、これで誰が損をするのか?といえば、ほとんど誰にも影響はない。それだけシステム側にお金が回れば、実際の作品に費やされる制作費というものはかなり削られるので、クオリティは下がらざるを得ない。だからといって、もしかしたら生まれてきたはずの良い作品が見れなかったかも、などという、あやふやな未来の損失を理由に怒る消費者はいないのだ。
まあ、そんなこんなでネットで作り手優位になることは、しばらくないかもしれないし、ひょっとすると、我々プロが恩恵を受けることは、もはや無いのでは?と思うこともある。しかし、グーグルがadvertiser to Consumer のダイレクトな関係を作ってくれたように、Creator to Consumer の経済が成り立つ新しいシステムを誰か作ってくれないかと切に願う(他力本願でスマン)。
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Comments
私、テレビ広告を何十年もやってきましたが、正直、システム側だけの問題ではなく、クリエーターやアーティストの方にも問題があるような気がしてなりません。アメリカやヨーロッパ含め世界中で仕事をしてきましたが、経験上痛切に感じるのは、日本のスタッフが、一番働かない。仕事のモチベーションも低いし、スキルもない。つまり、一番使えないスタッフが多いのが日本人スタッフなんです。何故、こんな風になってしまったかといえば、結局、3K職種だってことがバレバレで、誰も技術系の仕事をやろうとしない。広告を真剣にやろうとする人間は電通か博報堂にしか行かないのです。その他有象無象の会社に就職するのは、(失礼ながら)入れるほどの学歴がないか、或いはただ“業界”に憧れただけの興味本位のお子ちゃまばかり。
それに、日本の受発注システムの中では、“これはウチではやりません”というのは禁句で、結局志が高いほどウンザリする状況になってゆくのです。韓国だって、中国だって、当たり前のように“こんな仕事はやれませんよ”という当たり前のスタンスがあるのに、これを日本でやったら、先ずメシが喰えなくなる。だから、どんどんプロが居なくなってくるんです。ディレクターは映像の勉強なんか殆どせず、酒飲みの場つなぎトークばかりうまくなってくるし、カメラマンはちゃんとした構図が取れない。役者はみんなモデル出身で、芝居は学芸会なみ。みんな、これ“断る”ということを拒否したことから始まっているのです。だから、要するにメディア側は何も考えず、発注者の特権を享受できるのです。結局、なめられているんですよ。
だから、先ず業界にいる人に言いたいのは、バカな企画だったら断ってほしい。それに猛烈に自分のスキルを高める勉強をしてほしい。(タイムスライスも、ミミックも、マイロも知らないカメラマンなんてのは日本人カメラマンくらいのもんです)
システムの論理しか通用しないからこそ、マンガやオタク文化みたいに、メディア資本が馬鹿にして手を出さなかったところにしか世界的な競争力が育たない。
で、何が言いたいかといえば、結局今のWeb2.0の流れで、映像コンテンツが山のように溢れたら、結局安物や偽者のコンテンツは淘汰され、いいものが残るんじゃないかと期待しているんです。映像のこと良く解らなくてもBMEのHIRE見たら、みんなビックリするでしょ? こんな仕事は決してアマチュアじゃできません。やっぱり人をうならせるものっていうのは、プロじゃなけらば出来ないんです。暇つぶしの素人には出来ない仕事なんです。
だから、私は全然悲観していないんですけどね、将来的には。現実はまさしくハコフグマンさんが言うとおり、悲惨な状況なんだけれど。
Posted by: kinema | September 27, 2006 at 02:12 PM
やはり先立つものが無いと駄目なのでしょう。
ブロードバンドのおかげで制作会社・制作者が直接情報発信できるようになったと言っても、制作費集めは大変なことで、結局は広告代理店に頼った方が楽なのですからね。
Posted by: Piichan | September 27, 2006 at 07:04 PM
ちょうど少し前にお役所のデータを元に書いたエントリがあったのでトラバしました。
業界が特定されていますがつまらない資料でもないと思うのでご一読をば。
Posted by: kokona | September 28, 2006 at 02:24 AM
kinemaさま
耳が痛い。我々にも大いに非があり、研鑽を怠ってるのも、その通り。他力本願はダメってことですね。
piichanさま
僕もconsumer、userとのチャンネルを直接作る方法を考え、一部実行に移しています。
kkonaさま
TBありがとうございます。ゲーム・アニメ業界を見ると、まだマシ…いや失礼、何とかしないとね。
Posted by: hakohugu | September 28, 2006 at 11:28 AM
興業の裏も表も分かっている日テレなら、もっとうまくやってたものを。裏社会と明らかにつながりのある素材を生な形でお茶の間に提供するとは。TBSの●池は、単なるバカなのか。確信犯ならたいしたものだ。これじゃスポンサーも及び腰になるだろうね。
Posted by: jun | September 28, 2006 at 03:09 PM
社会的存在意義を問われる事のない、この業界(私も含めて)の人間が、生きようが死のうが誰も気に留めないだろうな。
Posted by: jun | September 28, 2006 at 03:33 PM
ピンボケな物を作っていようが、コネさえあれば生きて行けるのは、この世界の昔からの常識。正確に言えば常識だった。一挙にサラリーマン化している実動部隊にとってプロデューサーが「コネで連れてきた人間」なんて、煙たい存在以外の何物でも無い。完全に後ろ指さされています。
Posted by: jun | September 28, 2006 at 06:09 PM