納豆ねつ造事件に見る情報番組の腐敗構造
あるある大事典の納豆ダイエット、番組ねつ造の件であるが、この件のひどさについては各所で論じられているので、もう述べることもないだろう。他局の生活情報番組、科学番組にすらその影響が及びかねない大事件である。
納豆ダイエットを取り上げることは、どうも流通サイドにも放送の情報が漏れていたらしく、完全に虚偽の情報で消費者をだました「放送詐欺」の様相を呈してきた。関西テレビは、これからどのつらをさげて不二家を断罪するのか、けだし見ものである。
老舗のテレビ番組紹介サイト「教養ドキュメントファンクラブ」の鷺一雄氏が書き下ろした、昨年6月出版の「またあるあるにダマされた」という本でも、この番組のタチの悪さがあますところなく紹介されている。
この番組は日本テレワークが統括している。私もここのプロデューサーに昔ちょっとイヤなめに遭っているので、ざまみろという感じだ。テレワークは過去にもテレ東の「教えてウルトラ実験隊」でも花粉症に関して虚偽の情報を流して番組が打ち切りになった前科をもつ。
テレワーク自体は一般人には全く無名だろうが、我々業界人にとっては知らぬものはいない大手プロダクションである。フジテレビと役員が重複したり、縁戚関係もあって、実質フジテレビの子会社、別働隊みたいなものであり、汚れ役はテレワークが担うわけだ。やり手の制作者も多いが、今回のように孫請けに再丸投げというケースも多い。
つまりフジでも関テレでもなく、番組を統括しているのはテレワークであって、関テレの社長が憮然としていたのも無理はない。実際の制作は「アジト」というこれまた我々業界人でもよく知らないような無名の(うちの会社も同レベルだけど)TVプロダクションで、そんな社名すら聞いたことがないというのが関テレ側の本音だろう。
しかし、公共の電波を独占して巨額な利益を出しているのに、放送内容について全く知らなかったなどという「ギョーカイの常識」が世間では一切通用しないことを知るべきだ。孫請けに丸投げしてたので、責任はあいつらにあります、と社長の顔に書いてあるけど(苦笑)。この調子ならまた看板を変えて「あるあるⅢ」が始まるかもしれない。
これは放送業界ではタブーに属する事柄だが、弱小プロダクションへの営業サイドからの情報提供や売り込み、パブリシティというのはしょっちゅうあって、そこから企画をスタートさせることも多い。もちろんリベートは誰かの袖の下へ入る。だからプロダクションだけが情報を握っていて、局側は全く知らなかったというケースも本当にある。
お金に困っているプロダクションが実は最も内容に関して決定権があるという業界のカースト制度を逆手にとるわけだ。賢くなってきたよね、最近の営業さんたちも。
そんなわけで、なぜアジトが納豆ダイエットなる企画をやろうと思いついたか、という点も前出の「放映直前に情報が流出していた」という件ともあわせてよく調べたほうがいいだろう。まあ、実際のところはよく分からないが、納豆業界からの怪しげなデータによる「ダイエット効果」の売り込みの可能性もある。ネタにつまったプロダクションがそれに飛びついた側面があるかもしれない。
NHKも番組制作業務をプロダクションや派遣に丸投げすることが多くなってきたので、プロデューサーたちも自分とこの放送内容を今一度検証したほうがいいかもしれない。この回、よくよく見ると何か怪しいなという内容があるかも。正直、私のような弱小プロの個人にもこれまで知り合いを通じて、2回ほど化粧品と食品に関する売り込みがあった。局内に潜り込んでいるDに相談したら、リスクの方がずっと高いから相手にしないと言ってたけど。
そんなこんなでまだ糸を引きそうなネタだけど、実際納豆がダイエットに効くという企画がいったん通ってしまったら、いまさら「実験してみたら効果はありませんでした」なんていう言い訳がクライアントに通用するはずもない。リスクや責任はぜんぶ、この「アジト」という会社が負わされるんだろうし。時間も制作費も無い中で追い詰められて、ねつ造に手を染めざるを得なかった事情は痛いほど分かるし、想像もつく。明日は我が身であり、正直同情さえおぼえるというのが感想である。
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Comments
こういう番組は人命に関わるからこそ時間をかけて制作して欲しいものです。
それとテレビ局や制作会社は博士号を持っていても研究者になれない人(余剰博士)を雇ったらどうかと思います。
捏造が発覚したのは週刊朝日の取材がきっかけのようですが、ライブドアパブリックジャーナリストもテレビ局が事前に納豆業界に情報を流していたこと(過去には輸入手続に時間がかかるグレープフルーツも事前に情報を流していた)を指摘していて頑張っているようです。
Posted by: Piichan | January 22, 2007 at 10:57 PM
「2ちゃんねる」が不特定者の痰壷であるように、既存メディアはエスタブリッシュメントやエバンジュリスト・資本の痰壷だったという事で良いんじゃないですか?
万人に解放され痰壷であることを隠さない「2ちゃんねる」の方が、そうと分かって接する分には随分マシだと思うんですよね。
表層でスマートにカッコ付けたり編集したりしてる分は綺麗なんですけど、裏でやってる状況は相当エゲツナイ。
放送の歴史で考えると、末期的じゃないでしょうかね。
Posted by: トリル | January 23, 2007 at 12:54 AM
多重下請け構造で作る仕事は全部下請けに○投げ。
元請けはピンハネはすれども内容にはノータッチ。
亡国のIT業界を彷彿とさせるお話だ。
Posted by: とおりすがり | January 23, 2007 at 09:44 AM
結構、反響ありますね。タイムリーな話題だからか。
テレワークがつぶされることはないな。あそこはフジと一体だし。つまり責任がフジの幹部に及ぶためには、関テレよりテレワークの悪行を暴いたほうがいいか。
こういう社名がつかない実質的子会社というのが民放には結構あって、番組一本を任されていることからも分かるように、完全にフジの別働隊です。
むしろなぜ関テレが元請けなのか不可解ですが、大阪にはロクなプロダクションが無いからね。情熱大陸みたいに完パケ届けに、大阪まで行くんだろうか。そりゃそうだよなあ。
Posted by: hakohugu | January 23, 2007 at 11:31 AM
piichanさま
ほんとですね。文部科学省は博士一人採用するごとに、その年収の1/4を保証するとか、大学院重点化政策の責任をとってほしいものです。
トリルさま
末期的ですねー。様々な条件が重なり、起きるべくして起きた事件でしょう。もう若い奴で民放のADやる奴なんていなくなりつつあるしね。これ見てる若い人、絶対に民放番組のADだけはなるなよ。人材面で兵糧攻めにして、正常化しよう。
通りすがりさま
へーITもそうなんですか。そっちは全然知りませんけど、じゃあ若い人はITもやめよう、って、どこに行けばいいんだよ(笑)
Posted by: hakohugu | January 23, 2007 at 11:35 AM
公共放送で虚偽情報を垂れ流したことは勿論問題なのですが、その虚偽情報を何の疑問も無しに受け入れた民度の低い視聴者にも問題があると思います。嘘を嘘と見抜ける人が数多く育たない限り、またこのような事態を繰り返すことになるでしょうね。
Posted by: hoge | January 23, 2007 at 11:55 AM
丸投げっつっても僕がテレビやってた頃は結構チェックされたけどなあ。局PノーチェックでOAするってことはさすがにないでしょう。1社提供だから花王さんだって最終試写には来てますよね、きっと。いや知らないですけど。僕のときはスポンサー来てました。
CMの考査はメチャメチャ厳しいくせに自社の番組には甘いのかなあ。僕は番組やってないから関係ないけど、今後この事件のせいでCMの考査が厳しくなるかと思うと憂鬱になります。
Posted by: 3RD EYE | January 23, 2007 at 03:27 PM
hogeさま
ほんとテレビは時代を映す鏡です。作り手は何を視聴者が欲しているか、それだけを必死に考えているのですから。テレビを馬鹿にするのは、鏡に映った自身を馬鹿にしている(部分もある)と思います。テレビが俗悪なのは視聴者が俗悪だからに他なりません。だから私はNHKのような、広告や視聴率に頼らない公共放送がやはり必要だと考えています。
3RD EYEさま
NHKなんかと違って、民放の場合は試写の時に、より刺激的に、もっと面白く、さらに分かりやすくしろという、逆のツッコミが入るんではないですか。私にはおっかなびっくり綱渡りをしていた制作会社が、ついに落ちたように見えますね。発言を全く変えちゃうなんて、彼ら自身もある種、賭けに出ていたのではないかな。
Posted by: hakohugu | January 24, 2007 at 01:20 AM
今回の件は特に悪質でしたが大なり小なりどこも同じことをしているはずです。
私が恐ろしいのは「健康」「ダイエット」というだけで、視聴者が盲信する思慮の無さです。
母親が「あるある」好きなので、毎回イライラしながら観てました。常々「こんな気狂い番組観てたら気が狂うぞ」といい続けていたので、打ち切りになってせいせいしています。
商品が店舗から消え失せるなんて行動力は、どう考えても異常です。
「納豆は嫌いだけど、ダイエットの為に食べました」なんてバカが相当いたそうです。
「プルトニウムを飲んだら痩せます」って放送したら飲むんでしょうね。きっと。
こんな連中が「偉い人が言ったから」という理由だけで、平気で他者を虐殺するロボットになるんでしょうね。
Posted by: む | January 24, 2007 at 04:36 AM
多少なりとも何かの仕事をしていると
ゴニョゴニョという部分があるのは皆分かっているはず。
私が納得できないのはテレビの時にはハコフグマンさんや
池田先生みたいな事情通が仕組みとリスクをきちんと説明できるのに
不二家では死ねテメエになるのかということですよ。
Posted by: あう | January 24, 2007 at 09:40 AM
今回の事件はテレビ業界の構造を改革するチャンスだとは思いますが、この14年前の記事を見ていただけばわかるように、
http://www.aa.alpha-net.ne.jp/mamos/tv/prodctn.html
14年間、まったく、何も、変わりませんでした。
今回も何も変わらない可能性がかなり高い。
Posted by: hakohugu | January 30, 2007 at 07:10 PM
変わらないならそれが当然である、と喧伝するまでですね。
事実、私の(2月9日に販売決定しました)シナリオにも、マスメディアの人がうんたらすんたら、という部分を入れております。
P.S
すでに、Youtubeを利用した、ニコニコ動画という、
2chみたいに動画に日本人が突っ込みを入れるシステム、というのも出てきたところですし。
http://www.nicovideo.jp/
検索してみますと、あるあるの謝罪動画等も入ってました。
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http://left13.jp
Posted by: KM | January 30, 2007 at 08:49 PM