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日本中に無用な林道を残して逝った

 自ら死を選んだ松岡利勝・前農林水産相。故人にむち打つのはしのびないものの、東京地検による官製談合捜査が自らに及ぶとみてあの世へ逃げたのは間違いない。その無責任なけじめの付け方にはあきれるほかない。もっとも談合を差配してきた松岡氏にしてみれば、長年の慣習のようなもので、日本中の森林を破壊して、税金を食い物にしてやろうなどといった悪意は無かっただろうけど。



 先週、うちの会社に旧知の農業団体から、国内農業保護のために、WTOの関税引き下げに反対する署名の回覧板がきた。その際、WTO交渉の切り札として松岡氏の存在感は大きいという話を聞いたばかりだったので、今回の事件には本当に驚いた。一方で自民党からは、農協などの反対勢力を抑える役割も期待されていたようだった。いろいろな意味で、松岡氏は旧来型の日本的社会主義を体現している最後の世代の政治家だったのかもしれない。


 それにしても林道は、日本中の山岳地帯に驚くほど網の目のように張り巡らされている。国産材の価格は最近では上向きであるらしいが、林業従事者も減少の一途をたどり、森林生産という本来の目的からすると、ほとんど何の役にも立っていない林道が8割近いのではないかと感じる。私は学生時代、林道で四輪駆動車の走行などをずいぶん楽しんだものだが、俺のためでなければ、一体何のためにこんな山奥に道を通しているのかと不思議に思っていたものだ。

 日本の急峻で脆弱な地形を削って、困難な林道工事を進めてきた理由とは結局、端的にいえば林野庁と森林開発公団(現緑資源機構)のOBを高給で養うためだったのだろう。人の目が届かない山奥は、公共事業を食い物にするには格好の隠れ場でもあった。その過程で森は切り倒され、林道を横切る渓流はコンクリートの砂防ダムで固められ、生きものは住処を追われ消えていった。もちろんこれから将来的に森を有効に利用していくならば、貴重なインフラになるポテンシャルは秘めてるのだけどね。

山崎進一・元森林開発公団理
も含め、彼らを死へ追い詰める前に、この腐った談合システムに終止符を打っておけば、このような悲劇もなかった。旧来型の自民党政治家、安倍“世襲”総理のこれが限界なのだろう。検察も今回は失敗したと思っているだろうが、古い日本を壊していく中では、こうした悲劇は避けられない。いまはピンハネ・談合国家から、実力本位の公明正大な国に作り替えていく端境期にあるのかもしれない。

松岡氏一人の悪意がこのような林野の天下りシステムを作ったのではない。子供をのぞけば、ほとんどの日本人が率先して、あるいは見て見ぬふりをして、同じようなピンハネ国家作りに荷担してきたと言っていいだろう。いま日本においては、憲法改正で強い国作りを言う前に、腐りきった家屋の解体工事が先である。松岡氏の自殺は、時代の変わり目を象徴している事件だと思うが、参院選で日本人はその答えを出せるだろうか。

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