« よく見る番組 | Main | 年齢って必要か? »

クローズアップ現代「にっぽんの“頭脳”はいかせるか~苦悩する博士~」

  あの手この手で若者を搾取しようとたくらむ日本の社会構造の中で、最も悲劇的なものの一つが、博士号をとりながら研究の現場からはじき出される大量のポストドクターたちであろう。この番組では、世間でもよく知られるようになったポスドクの問題に切り込んだ。がんばって研究しても就職が無いので、博士に行く人は年々減っているそうだ。当たり前である。

 本人も家族も納得いかないこの問題。おそらくは幼少時より神童と言われ、東大・京大に入ったような秀才が、10年近い高等教育を受け、高い学費を払った上で、何の職にもつけないのである。番組では受け入れる企業の問題、後先考えず博士課程の定員を増やした文部科学省、融通の利かない専門バカである博士自身など、様々な問題が指摘されていた。

 どっちかというと、優秀な頭脳を生かせない企業側や、世間の常識からずれたポスドクにその問題があるかのような論調が多かったが、私は確信犯である文部科学省の責任を追及せずして、この問題は語れないような気もする。ポスドクを増やしながら、それを受け入れる公的な研究員の枠を減らし続けているのだから、やり口は悪質である。番組ではまるで偶然、ポストが減ったかのような口ぶりであったが。

 そもそも文部科学省は、学費をだましとり無給のアシスタントを供給するために、博士を増やしたとしか思えない。学生のモラトリアムや不況に乗じて、大学側も積極的に大学院重点政策に荷担していった。だが、世間知らずの学生はいともたやすく騙される。いま理科系大学生のいとこがいるが、よほどの自信が無い限り絶対修士のまま就職しろと口をすっぱくして言っている。

 自分の会社に博士号取得者が面接に来ても、おそらく上は取らないのではないかと思う。そんな優秀な人材を使いこなせるような、人間力や戦略に長けた上司自体が今の日本企業にはほとんどいないのである。もちろん博士とはいえ、高学歴なだけで使えない者も存在するだろう。限定された範囲でしか自らの能力が有効でないという事実への認識がうすいのだ。

 20~30代の精鋭なのだから、大学を出た仲間にでも社会人としての経験を聞けば、いかに現代の企業や行政が若者を搾取の対象としてしか見てないか分かるはずだろう。就職が無いのは、もはやしょうがないことだ。この現状を打開するには、どうしたらいいか?例えばポスドク人材バンクのようなものを作って、自分たちの能力をワンポイントリリーフとして使ってくれるような、企業とポスドクとのマッチングシステムを構築するのはどうか。

 その際、企業や行政、消費者のニーズを現場ですくいとって、ベンチャーの起業につなげていく。こうした行動力をもち、戦略を描けるポスドクがリーダーシップをとり、行政や企業に対抗していくしかないだろう。幸い、私の友人の博士はほとんどがみんな活躍している優秀な人たちだ。彼らを見ていると、既存の社会構造をひっくり返すような潜在的なパワーが博士たちにはあるに違いないと思う。

|

« よく見る番組 | Main | 年齢って必要か? »

映画・テレビ」カテゴリの記事

Comments

戦後の長い期間、日本の国際競争力は「良質な労働力の安さ」に有ったのだと思ってます。

技術者といえども会社や地域といった「全体」に低廉に奉仕する事で「全体」がステージを上げていくという一面もありますが、官僚・組織の長などが持ち場に付随した裁量を安定的に占めるという面もあります。
80年代からの円高では「労働力の安さ」という特質が失われ、少々ばかり優秀な人材といえども、それを雇用して継続的将来的に利益を上げられる土壌までは、ほとんどの企業・組織も自信が無いのだと思います。

「博士」「若者」が要らないというのではなく、「博士」については粗製濫造は元々「濫費」「見栄」「アリバイ」でしか無いという事でもあるでしょうし場合によっては悪貨が良貨を駆逐するような局面もあるのでしょう。円高については世代間で痛みを分かち合う事(権益の抹消・解体)で国内的にほぼ真の相対価値で所得や生活が図れるようにすべきだと思います。
少なくともそれでハードカレンシー変動による個々の国民生活の耐久度は非常に高くなると思います。
つまり新しい状況に慣れるまで時間が稼げるという事です。

いまや年金需給へ移りつつある世代的な既得権を握り締めた集団が再分配を行わずにスケープゴートを火に送り続ければ、国富を生む自立的な勤労者はこの国から居なくなってしまうでしょう。

Posted by: トリル | July 04, 2007 at 03:03 PM

博士が100いる村
http://www.geocities.jp/dondokodon41412002/index.html
というネタがありますよ。教えてもらったのはいつも見るブログ
http://blog.livedoor.jp/clausemitz/archives/50356591.html
でした。

Posted by: おやじです | July 04, 2007 at 09:00 PM

なんでも、最近は博士の人材派遣会社があるらしいです。そこそこうまく行っているようですね。それから、ここ最近は就職は少しずつですが、よくはなってきているらしいです。やはり不況の5年前くらいまでが最悪だったようですね。面白いのは、アメリカ人に聞くと、この博士問題状況は1990頃のアメリカにそっくりなんだそうです。丁度10年遅れということでしょうかね。それを知りながら同制度を導入した政府はほんとに頭悪いと感じずにはいられないですけどね。それよりなにより、この厳しい査定制度は是非とも、すでに職員になっている50代以上の研究者にも適用して同じように篩にかけてほしいですよ。おそらく3分の2は失職することでしょう。

Posted by: ねお | July 11, 2007 at 08:27 AM

トリル様
博士の需要を考えないで供給だけを増やした罪は大きいですね。でも相変わらず、責任は霧の中なのでしょう。

おやじです様
ありがとうございます。私も以前見たことがあります。真偽は定かではないようですが。

ねお様
厳しい査定の対象は若手だけという所がミソですね。人材を流動化させるためには、やっぱり優秀な人はみんなひとまず外資に行くとかしないと、この国は変わらないんですかねえ。


Posted by: hakohugu | July 11, 2007 at 05:42 PM

「博士」については専門性以外に国際競争力という視点が必要だと思っています。
結局、外部から優秀な人を連れてくるか地場から作り上げるかですが、いずれにしろ競争力がなければナンセンスですし、競争力があれば外資であれやっていけるでしょう。
円高は際限なく高付加価値を生む労働力を要求する相互スパイラルを生じますから、行政的には単純に「労働力の高学歴化・高技術化を」とかいう開発主導型の発想を過去の延長で進めただけでしょう。
国際競争力には一般にはコミニケーション能力も要求されるのは当然ですし、先進国の運営では途上国のように概ね単純に歴史的発展過程をなぞれば良いという訳でもなく、多様性の受容や複雑系への理解が社会的コンセンサスを得なければ難しいでしょう。

Posted by: トリル | July 12, 2007 at 07:16 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/58564/15646885

Listed below are links to weblogs that reference クローズアップ現代「にっぽんの“頭脳”はいかせるか~苦悩する博士~」:

» クローズアップ現代「にっぽんの“頭脳”はいかせるか~苦悩する博士たち~」 【追記あり】 [5号館のつぶやき]
 クローズアップ現代でも、ポスドク残酷物語を放送していました。内容は、例によって例のごとしで、博士号を取得しても大学の研究者になれずに不安定なポスドクを続けているとか、子供が生まれたのでポスドク生活をやめて企業の営業職に就職したとか、いう話です。  ちょっと面白かったのは、味の素がポスドクを採用しようとして40人の選考をしたけれども、適格者がみつからなかったという話でした。その時の採用担当者の話としては、すでに企業にいる35歳とポスドクで応募してきた35歳の能力を比較してみるととても採用できな... [Read More]

Tracked on July 04, 2007 at 03:54 PM

» クローズアップ現代を見て、「大学の知と企業を繋ぐために必要なもの」について考えてみた [muse-A-muse 2nd]
五号館(stochinai)さんのところに昨日のクローズアップ現代関連のエントリが上がってて、ぼくも見たので関連で思うこと述べつTB差し上げとこうかと思う。まずはこちらから 5号館のつぶやき : クローズアップ現代「にっぽんの“頭脳”はいかせるか~苦悩する博士たち~」 ..... [Read More]

Tracked on July 04, 2007 at 05:15 PM

» クローズアップ現代:博士処遇問題 [ハードSFと戦争と物理学と化学と医学 ]
ハコフグマン: クローズアップ現代「にっぽんの“頭脳”はいかせるか~苦悩する博士~」 良い番組だと思う。ただし、話題にするのは20年遅かった。 オーバードクター問題―学術体制への警告 日本科学者会議 / / 青木書店 ISBN : 425083039X  この本が発行されたのは、1983年。その時点で、すでにオーバードクターはアカデミア業界では問題視されていたのである。しかし、90年代になって、大学院重点化とともに、大学院生は激増した。大学教員数も増加はしたが、大学院卒業者の増加にくらべた... [Read More]

Tracked on July 06, 2007 at 03:40 AM

« よく見る番組 | Main | 年齢って必要か? »