時間を視覚化する
CMや映画などで、動きが急に早くなったり、遅くなったりする視覚効果がある。時間の流れが緩急自在に変わって、不思議な感覚に陥る。これはフィルム時代はなかなか難しかったが、いまではパソコン上で簡単に作ることができる。映像制作のデジタル化は革命的だ。
いま使っているファイナルカットプロというMacの編集ソフトには「時間のリマップ」という機能があり、時間の流れを数値化しグラフとして示すことができる。通常速度では右上がりの直線だが、例えばこれが逆再生にすると右下がりの直線で示される。
ちょっと右上直線で平行、また右上、平行となると、2回映像が途中で映像がフリーズするわけである。実際に見てみないとわかりにくい話で恐縮だが、つまりこれは時間の流れを線によって視覚化しているということだ。
ではこの線を、ベジェ曲線のような関数計算によって描かれるなめらかな自由曲線にするとどうなるか?ゆっくり動きだしてなめらかに進み、急激にスピードが上がって、またゆっくり下がるみたいな、ジェットコースターのような映像を作ることができるわけだ。
なぜ僕がこれ面白いなあと思ったかというと、4次元の世界では時間は時間軸という独立した物理量としてとらえられるのだが、3次元世界の住人である我々にはどうも想像がつかない。空間と時間の尺度がどういう関係性にあるのかよく分からないし、一方向の概念としてしかとらえることができない。
だが、映像編集の世界では時間を線分の形や方向に変換してビジュアル化することで、方向やスピードを自在に操作することができるのだ。加えて、映像に関しては、拡大率、色相、角度、中心点などもすべて座標点として数値化することができる。これによって、何か時空間を操作できるような錯覚に陥るのである。
もちろん、音声も波形として視覚化できる。昔はMAルームに巨大なスピーカーがあって、それを耳で確認しながら作業していたわけだが、今は耳ではなく目で作業している。デジタルによって視覚化できるからだ。これによって音声の操作もかなり容易になった。極端な話、スタジオはもはや不要でネット上で作業を完結することができる。
編集ソフトを開発した人というのは天才だなあと常々思っていたが、使えば使うほど映像/音声の世界の奥深さを知る。つまり映像編集というのは現実世界をいったんデジタルの二次元の仮想空間に閉じこめ、それを新たに再構築する作業ではないだろうかと思う。そこでは、現実を映像作品として再構築するディレクターや編集マンは、神の視点で独自の世界を作ることができる。
だが現実は、プロデューサーやクライアントの罵声を浴びて、作り直しの連続なのではあるが…。
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